RB26DETTトラブル事例のご紹介 ~ オーバーホールのすすめ

RB26DETTに魅了され、一生乗り続けたいと思ってくださっているみなさん、こんにちは。エンジン班の長鶴です。

本日は、フルオーバーホールを施工した際、施工前のエンジンで起こっていた現象とコンディションをまとめたので、皆さんにご紹介させていただきます。

 

【症例 ①】 エンジン内部からの異音

<原因>

オイル選定を誤ったため、オイルポンプ→シリンダーブロック→クランクシャフト→コンロッドというオイルライン上で目詰まりが発生。結果、油膜切れを起こし、コンロッドベアリングが焼きつき、メタルの表面コーティング剥がれ(=磨耗)により異音が発生。

<ワンポイントアドバイス>

たとえ交換サイクルが正しくても、エンジンの仕様や運転の仕方に合ったエンジンオイルを選択しないと、オイルライン上で目詰まり等を起こすことがあります。エンジン仕様に準じた指定オイルをご使用ください。

■走行距離 71,542Km でオーバーホールをした際のコンロッドメタル(車両 : BNR32)

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■新品のメタル

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【症例 ②】 エンジン内部からの異音&アイドリング不良

<原因>

過走行によりメタルなどの磨耗が進行。併せて、サーキット走行時の前後左右Gが生む「オイルの片寄り=油圧不足」によりコンロッドベアリングのコーティングが剥がれて異音を発生。また、メタルの磨耗が激しかったため、クランクシャフト自体も傷めた結果、アイドリング不良を招いた。

<ワンポイントアドバイス>

過走行による磨耗を防ぐためにも、10万kmを目安としたオーバーホールによる消耗部品の早期交換をオススメします。また、スポーツ走行を楽しまれている場合は、オイルパンバッフルプレートによるオイルの片寄り防止を実施してください。

■走行距離214,000kmでオーバーホールした際のコンロッドメタル(車両 : BNR34)/メタルの磨耗が進みすぎて銅素材(オレンジ色)が見えている

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■新品のメタル

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■ダメージを受けて傷ついたクランクシャフト

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■新品のクランクシャフト

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【症例 ③】 オーバーヒート

<原因>

冷却水の定期交換が実施されていなかったため、冷却水内のサビやスラッジがウォーターライン上で目詰まりを起こしていた。また、ウォーターポンプの交換形跡が見られたことから、ポンプ破損や磨耗カスの影響もあったと考えられる。

<ワンポイントアドバイス>

定期的な冷却水の交換(車検ごとが目安)を行いましょう。交換時に冷却水の汚れを確認し、場合によっては「ラジエーター本体」、「ウォーターポンプ」「サーモスタット」の交換を実施してください。また、交換パーツの状態によってはブロック洗浄(=要エンジンオーバーホール)が必要となります。

■走行距離 112,151Km でオーバーホールをした際の事例。ウォーターラインにスラッジが溜まっている(車両 : BCNR33)

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■オーバーヒートによりクラック/割れが入り冷却水漏れを起こしたブロック。こうなると過渡な熱によるシリンダーヘッドの歪みも発生し、ブロック交換に加えてヘッド交換が必要となる場合がある。

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【症例 ④】 走行中、急にブーストが掛からなくなり異音が発生

<原因>

ブーストアップでタービンに負荷を掛け続けた事により、タービンシャフトにねじれが発生。結果、リヤ側タービンのシャフトごとブレードが欠損。

<ワンポイントアドバイス>

簡易的なブーストアップに頼らず、しっかりとセットアップを行いましょう。特に、ブレードの金属破断は判りにくく、金属片がエンジン内部やマフラーに入り大掛かりな修理、部品交換が必要となる事例も少なくありません。

■ブレードが欠損してしまったターボ。欠損したブレードは粉々になりシリンダーやマフラーなどに混入し、大きな被害を与える

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■欠損したブレードが進入したことにより傷ついたシリンダー

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【症例 ⑤】 マフラーからの白煙(冷機時)

<原因>

過走行または、ブーストアップによりタービンに負荷を掛け続けた結果、タービン内部のシール破損によりオイル漏れが発生。

<アドバイス>

ターボチャージャーは消耗部品です。走行距離によって交換することを忘れずに。耐久年数は様々で、エンジンの仕様によっては交換サイクルが早まる事もあります。また、ターボからのオイル漏れはターボの組み付け精度やターボ自体の耐久性にも左右されるので信頼のおけるプロショップでの交換をオススメいたします。

■ 走行距離 29,351Km 某社製フルフロートタイプにオイル漏れを確認(車両 : BNR32)

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以上。

これらの症例は大森ファクトリーに入庫された一例です。また、エンジンのコンディションは様々で、不具合の兆候が出ているものから、分解して初めてその程度が分かる物もあります。

とはいえ、ひとつだけ確実に言えることがあります。

それは「ほとんどの症例は早めの部品交換で防ぐことができ、高額の整備作業にならないようにする」という事です。

最近、エンジンの調子が悪い気がする方や走行距離が伸びてきている方はもちろん、まだまだ問題なさそうだけどこれから先永く乗り続けたいとお考えの方はお気軽にご相談ください。

長鶴 俊一