RB26DETTエンジンオーバーホール日記【番外編】 ~オイルパンドレンの不具合~

皆さんは、大森ファクトリーの施工に特別な価値を感じて頂けていると思います。もちろん、そう感じて頂けなくてはと、日々の作業を行っています。

今回、スカイラインGT-R/BNR32のエンジン施工で、改めて「基本に忠実に、丁寧な仕事を施す事の重要性を考えらせられた」事例があったので紹介します。

(状態)

ボルトが斜めのまま締めこんだか?

トルクレンチを使わずオーバートルクで締めこんだか?

長年の劣化か?

結果的にドレン部ネジ山が痛み、STDが12mm径だった穴を14mmへ拡張し、新たにタップを使ったネジ切り加工がされた。但し、加工されたネジ山が【座面に対し垂直】に切られておらず、オイル漏れが発生。ごまかし/その場だけの対策として液状ガスケットを塗布し、締め付けられていた。また、ピッチサイズも変更され、適正トルクでの締付けが出来ない事から、新たに切られたネジ山も傷み始めていた。

(ドレンボルト:STD/左側と、使われていた物の径違いが解りますよね?)

(座面:一見、なんの問題も無いように見えるのだが...)

施工としては間違った方法ではありません。修理費用を抑える場合は穴の拡張は行う事はあります。但し、エンジンが車載されたまま、オイルパンを外さない状態での安易な加工が引き起こした二次損傷と推測できます。

(座面:修理加工後の状態)

1、問題があったネジ山部を切削。

2、切削サイズ合せ、STDサイズまで戻す為のカラーをワンオフ製作。

3、カラーと本体を特殊溶接。

4、溶接後の穴加工として、下穴・面出し・タップを施す。

(内側からみた状態:溶接痕がわかりますよね!

(STDドレンが垂直に入るようになり、規定トルクも出る状態に戻せました!)

第二世代スカイラインGT-Rは、部品の生産廃止の影響もあり、既存の部品/パーツを丁寧に扱う必要があります。中古品でさえ入手が困難な事もあります。

また、今回の様に正しい修理加工を行わないと、カラーを溶接する費用を無駄に発生させる事にもなります。そして、最も恐れるのは、オイルパンを外さず行った結果、切削屑がエンジン内部の油経路に入り込み、メタル・ピストン・シリンダー側面・ターボまで損傷し、高額な修理費用が発生しかねない事です。

チューナーや整備者は、【正しい選択・正しい提案・正しい施工】を行う義務があります。時には【皆さんにダメな物をダメと説明する勇気】も求められます。そしてなにより、【経験に基づいた、奢らない作業】が求められ、施工した部位は、何十年も残り、何処かで、誰かに解って貰える。改めて、そんな事を考えらせられました。

エンジン班の長鶴でした。