RB26DETT S1パーツコンバージョンエンジン オーバーホール日記 Vol.3 ~ 運動系(エンジン分解)編

■オーバーホール実施のS1パーツコンエンジンデータ

施工日 2002/11/14
施工後距離 73,812km
S1パーツコン基数 328基中35基目

 

みなさんこんにちは。エンジン班の長鶴です。

今回は、エンジンの心臓部である運動系の状態を確認していきます。S1パーツコンは運動系に関しては手付かずの状態ですので重点的にチェックしていきます。

 

■駆動系の点検パーツ一覧と点検結果

カテゴリー パーツ 点検結果 <参考>オーバーホール作業
運動系 ピストン&ピン OK 交換(オプション)
ピストンリング NG 交換
コンロッド OK 洗浄 → 点検
コンロッドベアリング OK 交換(オプション)
クランクシャフト OK 洗浄 → クランクピン&ジャーナル研磨ラッピング施工 + 曲り修正(オプション)
メインベアリング OK 交換(オプション)
クランクプーリー NG 交換

 

続けて、各パーツの状況をひとつづつ確認していきましょう。

 

■ピストン&ピンの点検結果

No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6
OK OK OK OK OK OK

img_1762

通常ですと、ピストンのカーボンを落として綺麗にするのですが、今回はオプションでN1ピストンを選択いただいたので新品交換します。

ちなみに、ピストンの状況ですがスカート部の当たり・消耗は少なく、ボアの状態も悪くありませんでした。詳細についてはシリンダーブロック編でご紹介します。

なお、N1ピストンの特徴として、「ピストンリングの厚さ」が挙げられます。

標準ピストン用ピストンリングの厚さが1.5mmなのに対してN1ピストンのそれは1.2mmとなります。0.3mmの差でフリクションが低減し、動きが良くなります。さらに1.2mmという厚さにより、シリンダーとの接触面が狭くなり面圧が上がり、燃焼ガス圧の維持にも有利になるというメリットがあります。

 

■ピストンリングの点検結果

No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6
NG NG NG NG NG NG

img_1660

ピストン下部にカーボンが落ちてきていることから、コンプレッションには表れないピストンリングの密着不良が考えられます。

 

■コンロッドの点検結果

No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6
判定 OK OK OK OK OK OK
曲り 0.1以下
ねじれ 0.1以下
小端部 21.001 21.003 21.003 21.001 21.001 21.003
(単位/mm)

コンロッドアライナーで曲りとねじれを点検。曲り限度値0.15mm、ねじれ限度値0.3mmに対し、測定値はいづれも0.1mm以下であり、継続使用可能。

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コンロッド小端部の計測はダイヤルゲージで行います。内径の基準値21.000mm~21.012mmに対して全て基準値内でした。

img_1760

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計測と言えば!

エンジン作業室には温度計がいたる所にあります。これは計測精度を上げるため、室温を一年中一定にする必要があるからです。計測する前に温度計を見る事が癖になってたりします。エンジン作業室では一年中半袖での作業も可能です。

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■コンロッドベアリングの点検結果

No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6
OK OK OK OK OK OK

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コンロッドメタルはコーティング部分の状態も良く、再使用も可能ですが、今回は交換を選択いただいたので新品交換します。

 

■クランクシャフトの曲り測定

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曲りの純正基準が0.05mm。今回のクランクシャフトはファクトリーの曲り修正基準以下の0.006mmと良好でした。

ただ、まれに0.001mmという殆ど振れの無い状態のクランクシャフトに出会う事もあります。

 

<参考 : ラッピング作業>

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全てのクランクシャフトに磨き作業としてのラッピング作業を行います。

ラッピング作業によりクランクシャフトの当たり面の傷を滑らかにします。クランクシャフトの当たり面に傷があるとベアリングに傷を付け、それが広がり、油圧が維持できなくなるなどの不具合の原因になるので、とても重要で必要な作業です。

 

■メインベアリングの点検結果

No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7
OK OK OK OK OK OK OK

img_1650

コンロッド同様に良い状態のメインメタル。再使用も可能ですが、交換を選択いただいたので新品交換します。

 

■クランクプーリー

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クランクプーリーのダンパーにクラック有り。

クランクプーリーのダンパーはクランクシャフトの共振を押さえる働きをします。この共振が押さえられないとクランクシャフトが振れることでメインベアリングに強い力が加わり、傷ついたりコーティングが剥がれたりし、油圧低下の原因になります。

一方、ベルトの当たり面にサビが出ています。このまま使用すると、ベルト切れなどの不具合に発展する恐れがあります。

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以上、運動系では、ピストンリングやクランクプーリーといった部分に不具合が発見できました。

次回はシリンダーヘッドなどの動弁系を見ていきます。

Vol.4 シリンダーヘッド(動弁系)編につづく。

長鶴 俊一