【RB26DETT-S1 エンジンオーバーホール日記 異物混入?編】VOL.2

トラブルである「圧縮低下の原因はなんだ?異物か?」で始まったS1エンジンの分解作業。シリンダー内部の傷の他にも、分解点検していく過程で不具合が何点か見つかりましたので写真を見ながら合わせて説明していきます。

●整備記録の把握●

このオーナーの方は本当に素晴らしく、メンテナンスノートを含めた整備記録簿類を、きちんと保管してくれていました。作業に入る前に、何時?何処で?何を交換整備したのか?確認から入ることが出来ます。もちろん、起こり得る発生原因の予測の参照も出来ます。

■スパークプラグとイグニッションコイルの状況■

懸念①:【交換時に外したプラグの電極状態の確認を行ったか?】ですが…今となってはわかりません。

施工納車後に他の整備工場でスパークプラグの交換を行ってから約5,000Kmが経過。交換されていた、このプラグ自体問題はありませんでした。

ちなみに、No.3シリンダープラグの電極部分が腐食しているのを追加で確認しました。

懸念②:【スプリングの欠落だった場合、どこに落ちたのかということですが、プラグホール内には見当たりませんでした。】もしかして…今となってはわかりません。

当然確認する部位としてのイグニッションコイルは、通常、画像右側のようにスプリング(もしくは碍子)が入っているのですが、この車両には付いていません。ちなみに、プラグの電極はスプリングがない事で接触不良を起こし、腐食しているものと思われます。

■ターボチャージャーの状況■

安心①:【ターボチャージャーのフロント面ですが、ブレードに傷は無く、異物が混入した形跡も見受けられません。同じくリヤ面にも傷や破損は見られません。】

シリンダー内部に傷を付ける原因として一番多いのがタービンブローによる異物混入ですが、トラブルはありませんでした。

ですが、ブローバイと思われるオイル付着はあり、画像でもオイルが溜まっているのがわかると思います。また、フロント側と違いリヤ側は、シール不良時に見られるオイル漏れもはありませんでした。

安心②:【ハウジングにエンジン内部に傷をつけてしまう程の割れに伴う金属欠落は見られません。ターボチャージャーが原因ではないようです。】

ターボチャージャーで一番クラックが入りやすいスイングバルブ部分もチェック。矢印部分の小さいクラック発見。高温高圧にさらされるだけに、ここはほぼクラック入っていますね。ターボチャージャーは消耗品だということがはっきりわかります。

■インテークマニホールドの状況■

安心③:【インテーク側からの侵入も考え、インテークマニホールド部分の点検を行ったが、異物が通過したような形跡は見られませんでした。】

これといった部品の不具合も見られませんでしたが「もしかするとシリンダー内に何か残っているかも?」という推測を前提にシリンダーヘッドを外してみました。

内視鏡で確認した通り、やはり何かが侵入して付いたと思われる傷が確認できますが、異物そのものは既にエンジンの外に出てしまった?溶解したか?内部には残っていませんでした。

異物は残っていませんでしたが、内部で暴れまくった形跡はくっきりとシリンダーヘッドに残っていました。手前のインテーク側の多数の傷も目立ちますが、奥のエキゾースト側に付いている深くて大きい傷も確認され、イグニッションコイルのスプリングの侵入も考えていたのですが、そんな小さな部品ではないようです。

結論:【ターボチャージャーのブローやスパークプラグの熔解といった、よく見られる不具合が原因ではありませんでした。正直、相当気持ち悪いのですが、原因特定はできませんでした。】

アドバイス①:オーナーの皆さんが出来る事ではないのですが、【ターボやインレットパイプ、そしてスパークプラグなどの部品交換時、異物がエンジン内に侵入してしまったケースも多く、今回もそれが原因かもしれません。作業前のエアーブロー清掃。装着部品にゴミや異物が無いか確認して付ける。不具合に伴う部品交換でなくても、外した部品の状態確認を行うなど、作業の基本を誠実に行う事が重要です。】

アドバイス②:これはオーナーの方が把握すべき内容ですが、【プラグ交換は、必ず指定の部品番号の物を使って下さい。熱価だけ合わせて電極形状や素材が違う物はNGです。また、エンジンの仕様によって変わりますが、約20,000km毎での交換を推奨します。】

次回は【他の部位への影響確認を含め、部品が継続使用できるかどうか?】、インジェクターやバルブ、ピストンの点検や分解に入って行きますね。