1000基以上のRB26エンジンを組んできたNISMOでも、たぶん初めて見ると思います。
エンジンから振動と異音が発生したBNR32(山梨県)を点検すると、クランクプーリーが破断/割れている!
破断原因の特定もあるが、大森ファクトリーのメカニックでも、エンジン各部へのダメージがまったく想像できない。
そこで、オーナーと相談の上、エンジンをオーバーホールする事にしたので、皆さんにも紹介させて貰います。
まず、タイミングベルトや、オイルポンプなどの駆動部位を点検。なんらかの理由で同部位がロックし
その結果、プーリーに負荷が掛かり破断したのでは?
しかし、結果は、そのような不具合は診られませんでした。
また、こちらも原因として考えられる、メタルが焼付く事でのロックも発生していませんでした。
ただし、センターベアリング/#4に、油膜切れが原因と思われるメタル表面の剥がれを発見。
上記写真のように、新品メタルと比べると、油膜を保持する為のコーティングが剥がれ、
銅素材が出てきている事が解りますよね。
また、メタル同様に、クランクシャフトにもダメージが及んでいました。
これらは、エンジンの仕様用途(温度域)に合わせた、オイル管理と潤滑経路の構築が大事になるので
すが、例えば次の事が挙げられます。
1)オイルパン底部の隙間大きい場合/STDの場合、コーナーリングGの影響で、オイルが流動し過ぎてしまいます。
2)そうなると、オイルストレーナー吸い込み部に、オイルが足りなくなり、油量不足の状態になります。
3)その後、油膜を保持すべき適正量が確保できない状態で走行を続けるとメタルへのダメージが発生します。
今回のメタル表面剥がれでは、要因の一つと言えるでしょう。
大森ファクトリーでも、オイルパンへのバッフルプレートの装着を対策の一つとして実施しています。
上記写真のように、底部までカバーしているバッフルプレートを装着し、オイル溜まりを確保する事で油
量の保持ができるようにします。
ちなみに、部品単体での装着は工賃が高くなる部位なので、エンジンO/Hの際にMUSTアイテムにする
事を推奨します。
さて、本題のクランクプーリー割れですが、エンジン内部に原因はありませんでした。ではなぜ割れたの
か...
想定できる要因としては、
1)高負荷域の衝撃を、劣化したクランクプーリーのダイナミックダンパー/ラバーだけで吸収しきれず
2)プーリーに金属疲労が蓄積し、破断したものと思われます。
今回は稀有な事例ですので、通常の点検レベルでは発見し難く、心配し過ぎない方が良いのですが、
SKYLINE GT-Rが誕生して相当の年を重ねて来ています。金属自体の劣化事例が増えて行けば、エン
ジンのオーバーホール時以外でも交換すべき部品になっていきますので、私たちも注視して行きたいと
思います。
さて、8月の初旬には年内2回目となるエンジン商談会を行なう予定です。正式に決まりましたらご案内
させて頂きますが、第二世代GTRを長く乗って行きたい皆さんは、是非、有効活用してみて下さい。