大森ファクトリーはV型のエンジンもやるの?なんて声が聞こえてきそう。
もちろん、こちらもスペシャリストですよ!
さて、以前紹介しましたが、数量限定で案内をさせて頂いた380RSのエンジンオーバーホール。
V型エンジン特有想定の不具合が見つかりました。
この車両はサーキットを比較的多く走る機会があるようで、エンジンが高温になる割合が多かったようです。オーバーヒートは起こしていなくても、高温を繰り返しているとシリンダーヘッドやブロックが膨張、歪み、そして摩耗が発生してしまうケースがあります。
今回、限度値が0.015㎜に対し、1番シリンダーは0.040㎜のクリアランス測定結果が出ました。かなり大きくなっています。
「え?これって大きいの?」と思った方も…ダメです。もちろん、正規の性能が出ない事以外に、エンジンの耐久性を著しく!急激に!劣化させていき、交換しなくてよい部品まで破損させていきます。
ちなみに、歪みってどうやって調べるのかですが、シリンダーボアのX軸とY軸を測定し、その差異で求めます。ここの差が大きいと、俗にいう楕円形という形になります。円形のピストンに対して楕円形のシリンダーボアだと圧縮もれを起こし、コンプレッション低下の不具合を発生する事が初期症状です。
一般的に、STDエンジンは0.2㎜オーバーサイズのピストンまでが補修設定としてあり、合わせてブロック側のボーリングをして対応するのですが、380RSは専用ピストンで1サイズしかありません。よって、今回の施工では、ピストンと合わせシリンダーブロックも再使用不可という判断になりました。
ではなぜ1番シリンダーが駄目になったのか。これはVQエンジンの冷却水の流れにも要因が見込まれます。通常、ラジエーターで冷やされた冷却水は2番(エンジン前方)から内部に入ってきます。エンジンを冷やしながら後方に流れてきて、5番6番の所から外に出ていくのですが、どうしても1番の所だけ流れが滞り、熱が溜まりやすくなっている事が推測されます。そこにピストンが強当たりしていくのですから、ボアが広がっていくのは防げない事かもしれません。
摩耗したピストンは、モリブデンコーティングが剥がれている部分の当たりがどうしても強く、更にクリアランスが広くなる要因になります。摩耗したピストンとシリンダーブロックを交換し、最適なクリアランスにしてやる事で、NAエンジンのレスポンス。つまり気持ちのいいフィーリングを戻す事が出来るわけです。
今回の車両、サーキット走行をされていますが、日頃のメンテナンスも行われ、冷却系パーツの装着もされています。ですが、熱害は起こります。
但し、早めのオーバーホールを決断した事でエンジンを壊すまでには至っていませんでした。ナイスな判断です!
これからも380RS、3.8L仕様のVQ35HRエンジンを楽しんで下さいね。
そして、ブロックがバックオーダーで少しお待ち頂いていますが、納車を楽しみにしていて下さいね。
では。